【大人の愛着障害】大人の愛着スタイル・4つのパターンと乗り越え方 ~愛着障害を克服するために~

対人関係が上手くいかない時、ネットや本屋さんで調べる勉強熱心な方がとても多いです。
とはいえ、いざ調べてみたら「愛着障害」という言葉に出会ったけど、分類が多くてよく分からない・・・。
そんなご相談を頂く事が増えてきました。

そこで、今回は愛着スタイルについての4つの分類と、愛着障害を乗り越え方についてお届けします。

そもそも愛着障害とは何?

「愛着」という概念を発見したのはイギリスの精神科医で精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby)です。彼は1950年代、第二次世界大戦後のイタリアの孤児院で、母性を剥奪された孤児たちの精神的衛生状態を観察する事により、乳幼児と養育者との情緒的結びつきの重要性に気付きました。

簡単に言ってしまうと、よう(養護者)との信頼関係(愛着)を乳幼児期に築くことが出来ず、心に負ってしまう傷や信頼関係における認知の歪みを「愛着障害」ということになります。

また、のちに彼の研究チームに在籍したアメリカ系カナダ人のメアリー・D・エインワースは、アフリカでのフィールドワークにより、「心の安全基地」(その人がそばにいると安心できる人の事)という概念を提唱しました。

医学上の分類と愛着スタイルの分類を区別しよう

愛着スタイルの4つのパターン???
色々調べていると、もっとたくさんの言葉が出てくるんだけど。。。

そんな風に思った方もいらっしゃるかもしれません。

実は、DSM(米国精神医学会の診断マニュアル)により医学的に分類される「愛着障害」と「愛着スタイル」は分けて考える必要があります。そもそも、愛着障害を医学的に扱う場合は、現時点では主に子どもについてのものです。

この中での「愛着障害」の分類が

ⅰ)「反応性愛着障害」虐待やネグレクトなどで養育者との関係が損なわれた状態

ⅱ)「抑制型愛着障害」誰にも懐かない状態

ⅲ)「脱抑制型愛着障害」見境なく懐く状態

となります。

近年「大人の愛着障害」と呼ばれるようになった成人の生き辛さは、医学的な「障害」として分類されたものではなく、上記ⅰ)~ⅲ)とは区別して、単に「愛着障害」と表現されるもので、病名や障害名ではありません。
その中での症状のパターンを4つのスタイルに分けて考えいます。

大人になった方が「あれ?なんだか生きづらい」と思った時には「愛着スタイル」(子どもだと「愛着パターン」と呼ばれます)を参考になさった方が分かりやすいかと思います。
どう違うの?と言われそうですが、医学的に診断が下りる病気や障害ではないけれども、「乳幼児期に養育者との間で築かれた信頼(愛着)を大まかにパターン分けしたもの」と考えると分かりやすいかと思います。

現在の人間関係(他人を信頼できるか、自分を大切にすることが出来るか)などの基礎がこの幼児期の愛着にあり、今も続いているもの、と思って頂ければ理解しやすいのではないでしょうか?

では、順にみてゆきましょう。

※各症例名は子どもの愛着パターンの呼び名ですが、括弧内は大人の愛着スタイルの呼び名です。
 併記してありますので、「何か違うの?」と思われるかもしれませんが、内容は同じだと思って下さいね。

安定型(自立型)

●主な生育歴
生後半年から2~3歳ごろまでの間に、養育者との間に良好な関係があった方です。
必要な事に関しては、きちんとケアをしてもらえるし、逆に必要でないことは過保護にされたり、支配されたりすることはなかったケースです。
そのため、大人になってからも安心して社会と関わることが出来ます。

●成長してからの対人関係
安定した絆を築く事が出来、自分の事を好きな人はずっと自分が好き、と相手を信頼することができます。
(相手が自分を嫌いになってしまうかも・・・と理由もなく不安になる事はあまりありません。)
困った時には気軽に誰かに助けを求めたり、相談することができます。
また、相手の反応に良い意味であまり左右されません。そのため、自分の意見を言う事も出来ますし、相手からの意見も裏を考えたりせずに素直に受け取る事ができます。

回避型(愛着軽視型)

●主な生育歴
養育者との関わりが乏しかった(養育者が子どもを避けたり、拒絶したりした)ケースで、養育者を安全基地としていません。逆に養育者が過剰に支配的な応対をしたケースも含まれます。
褒められたことがない、という方が多いです。
このパターンの方は子どもの頃の記憶があまり思い出せない場合が見受けられます。

●成長してからの対人関係
友達や仲間と一緒にいる事にあまり意味を感じませんし、情緒的なつながりをあまり心地良いとは感じません。
1人でいる時が最も楽だと感じるタイプです。過度に人とのかかわりを避ける事もあります。
自分を開示する事、自分を表現することが苦手です。相手と意見を戦わせることも苦手なため、相手と対立する、ということもしません。
また、人に頼る事や他人に迷惑をかける事をよしとしません。
逆に、誰かに助けを求められた場合は怒りを感じる事もあります。
周囲からは一見冷静に見えますが、自分の気持ちを表に表現することが少ないため、実はとてもストレスを溜めています。そのため、ちょっとしたきっかけで攻撃的になったり、切れると爆発する傾向があります。

●信頼を築くためには・・・
このタイプの方にとっては、利害や力におけるの結び付きが唯一信頼できる結びつきと言えます。
しかし、自分の関心がある事を教えたり語る事は好きなので、何かについて教えを請うたり、本人の好きな事をじっくり聞いてあげると少しずつ心を開くかもしれません。

不安型(とらわれ型)

●主な生育歴
ある時は優しく過保護なまでに構ってくれるのに、ある時は無関心になるなど、養育者の子どもへの接し方に極端に一貫性がなかったケースです。
養育者が神経質で過干渉だったり、保護者自身が不安が強かったり、神経質だった場合も当てはまります。

そのため、子ども側は養育者に甘えたくても、いつ厳く接してくるか分からない、という不安を抱えています。す。自分は無条件に愛されることはなく、愛されるには何か条件付きでないとならない(テストの点がよいとか、「良い子」であるから、等の理由がないと愛してもらえない)、と無意識に思っています。

●成長してからの対人関係
「不安型」とありますが、何が不安なのか・・・と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
ずばり、「いつ見捨てられるか分からない」「いつ見捨てられてもおかしくない」という不安です。
(仲良くしているけれど、相手は本当は自分の事は好きではないかもしれない、という不安も含まれます。)

そのため、見捨てられないようにいつも周囲に気を使って、自分の意見とは違っても相手に合わせてしまう事が多々あります。不当な要求も引き受けてしまうケースが多いです。
又、ちょっとでも相手の表情が曇ったりすると、このまま関係を絶たれたりするのでは?と激しい不安に襲われます。
相手が自分を不当に扱っている、という被害者意識も強く、敢えて相手を攻撃する一方、自分自身をも攻撃してしまいます。このことで自己嫌悪に陥り、そんな自分をまた攻撃する、というネガティブループに入りやすいです。

●信頼を築くためには・・・
心配しているよ、大切に思っているよ、と伝え、共感の気持ちを伝え続けることが、当事者にとっての安心につながります。

混乱型(未解決型)

●主な生育歴
養育者からの虐待、養育者自身が混乱型(未解決型)であった場合、または厳格で支配的な養育者に養育されたケースです。
養育者からの拒否、虐待、喪失体験などを心理的に解決できておらず、無意識下で恐怖の感情を抱き続けている事があります。

●成長してからの対人関係
回避型と不安型との混合版、とも言えます。
1人だと寂しく不安に感じるのに、誰かと親密になるのはストレスに感じる。人には頼りたいが自分の事を開示することが出来ない、など相反する面をもっています。
人に頼ったり甘えたりするのはとても苦手ですが、かといって回避型の方の様に人と距離をとるのは上手くありません。また、相手のちょっとした言動が自分を尊重していないように感じられ、相手を信じられなくなってしまいます。
成長するにつれ、段々と安定した愛着を手に入れても、別離や孤立により、混乱状態に陥ってしまいます。

克服出来ていない過去のトラウマや衝撃的な体験があっても、問題をなかったこととして蓋をすることにより、自分自身を保っています。そのため、無気力になりがちです。

未解決型の方は、ご自身の抱えた傷やトラウマを癒しきれておらず、傷口がふさがっていない状態といえます。
その傷が、家族関係や夫婦関係、友人関係などに新たな傷を生み出してしまうケースも往々にして見られます。この場合は、過去のトラウマよりは、現在進行形で起きている傷に向き合い、癒す事が大切になります。

~参考:未解決型の2パターン~

※未解決型+とらわれ型:他人の些細な変化が気になるため、疲れやすい。
            孤独を恐れ、自己破壊的行為を行う事も

※未解決型+回避型: 他人の変化がが気になるが、また嫌な目に合うかもしれない、と心配になり、
           自分の空に閉じこもる事が多い。不登校・引きこもりになりやすいパターン

 

では、どうやって乗り越えたらいいの?

愛着障害は、幼少期に養育者との間に適切な愛着が築けなかったことが問題です。
自分は自分のままで無条件に愛される存在だ、そんな実感を持つのが一番です。
小さなお子さんなら、もう一度養育者との関係をやり直す事も可能ですが、大人の場合、そうはいかない場合もあります。又、身近な誰か(友人や親せき等)に「心の安全基地」となってもらう手もありますが、実は、どなたにでも出来る方法があります。

それは、
ご自身が誰かの安全基地になる事
です。


安全基地が必要なのは私の方なのに・・・と思われるかもしれませんね。(当然だと思います。)
実は、誰かの安全基地になろうとすると、安全基地になる「技術」を身につけることができます。
この「技術」は自分に対しても使う事ができます。
すると、自分自身が自分自身の安全基地になる事ができるのです。

それでは、誰かの安全基地になるポイントを、5つ、簡単にお伝えします。

①安全感の保障

安全感って何?と思われるかもしれません。
簡単に表すと、「この人と一緒にいても傷つけられることはない」という感覚、でしょうか。
(物理的な「傷つける」だけではなく、心理的な側面も含みます。)

愛着の問題を抱える方々、今まで身近な人によって(悪気のあるなしには関わらず)、心身にを傷つけられた方々にとって、「この人から傷つけられることはない」と思えることはとても大切な事です。

②応答性

読んで字のごとく、応じ、答える事ですが、実は大切なコツがあります。
相手が求めている時に、応じてあげるという事です。(この人になら、いざという時に相談できる、この人なら守ってくれる、という安全感につながります。)

そしてもう一つ。忘れられがちなポイントですが、相手が求めていない事をしたり、相手が求めていないタイミングで余計な事をするのも応答性とは異なるものです。

自分でやってみたかったことを誰かに手出しされてしまったり、頼んでないのに(相手は親切のつもりでも)勝手に何かをされて、嫌だった記憶はないでしょうか?
子育て中の方だと、お子さんに自分で経験してほしい事でも、時間がかかったり危なっかしいのでついつい手出しをしてしまい後悔した、といった経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。

そういった事をしない、ということです。

③共感性

相手が感じている事や求めている事を察して、それに共感する事です。
相手の言動の裏にある気持ちを考え、その気持ちを否定せず、一旦丸ごと受け入れてみる、ということです。
必要なのは「共感する」というところまでです。そこから先は求められない限り、手出しは不要です。
尤も、本人が言い出せなくて困っているようなときには、さりげなく手助けしてあげてもよいかもしれません。

④安定性

相手への対応を一貫させる、ということです。
不安型(とらわれ型)の生育歴のところでも触れましたが、求めに応じたり応じなかった理では、相手は自分を信頼してくれませんよね。
その場の気分や都合で態度を変えたりせず、出来る限り一貫した対応を取って下さい。

⑤誠実さ

相手を1人の人間として尊重する事です。
本心から相手を尊重している場合、相手の気持ちも認めつつ、必要な場合には相手の意に反する事も伝えます。
①~④の条件を満たしていれば、必要な言葉には相手もきっと耳を傾けてくれるでしょう。
また、相手からも必要な事を言いやすくなり、深い信頼関係を築いてゆけるようになります。

特に大切なのは・・・・

先程の①~⑤のうち、特に大切なのは③の共感性です。
相手の気持ちを汲み取ろう、という行動を心がけていると、いつしか状況を冷静に俯瞰できる力が身に付きます。
その力は、いつしか自分の中に不安や孤独、誰かに対する怒りの感情が沸き起こった時、ご自身の一時的な感情から一旦離れて、どうしてこんな気持ちになったのか、を冷静に考える力となります。

冷静に考える力が身につくと、愛着障害からくる人間関係の不安から離れることが出来、相手に対しての思いやりを発揮しやすくなります。思いやりを伝い合える関係から、お互いに共感しあえる人間関係が築かれ、その関係性から他者との愛着やご自身の心の安定を手に入れる事が出来るようになります。

まとめ

今回は、愛着スタイルの4パターンの内容(主な生育歴と成長してからの対人関係)、その乗り越え方を見てきました。

愛着スタイルの4つのパターンは

・安定型
・回避型(愛着軽視型)
・不安型とは(とらわれ型)
・混乱型(未解決型)(・未解決型+とらわれ型 ・未解決型+回避型)
でしたね。

乗り越え方は、ご自身が誰かの愛着基地になる事。
ポイントは
・安全感の保証
・応答性
・共感性
・安定性
・誠実さ
で、共感性が特に大切でしたね。

理屈としては分かったけど、1人で実践するのは心もとない。
自分のケースはどうなのか、話をゆっくり聞いてもらいたい。
これを機に、自分の生き辛さとしっかり向き合いたい。

そんな方は、下記リンクより、是非お試しカウンセリングにお申込み下さい。
カウンセラーには守秘義務が課せられております。知り合いには話しづらかったり相談しづらかったことも、安心してお話頂けます。

話がまとまっていなくても大丈夫です。どうぞお気軽にお申込み下さいね。

「【大人の愛着障害】大人の愛着スタイル・4つのパターンと乗り越え方 ~愛着障害を克服するために~」へのコメント

コメントはありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です